2.ビールのスタイル、タイプ | → home |
ビールのスタイルは、製法や発酵の方法の違い、使用する材料、季節、昔からその土地でつくられているスタイルの名称、などで変わってきます。できあがったビールに対して、飲む側がわかりやすく(?)細かくタイプ分けすることもあります。 |
■オランダで見られるビールのスタイル |
ベルギーのフランドル地方はオランダ語圏(フラマン後)で、ベルギービールと共通するスタイルがオランダでもあります。オランダで見られるビールのスタイルは、主にベルギービールとドイツビールの影響を受けたものが多いような気がします。
20年ほど前からマイクロブルワリーができはじめ、アメリカや日本のマイクロブルワリーのように世界のビールスタイルを取り入れてつくっているところも多いようです。 |
Pilsener, Pils【ピルスナー、ピルス】
もともとは、チェコのピルゼン地方でつくられた下面発酵の黄金色のビールを指す。淡色モルトを使用し、アルコール度数は5%前後。世界中の醸造所が製法を取り入れ(真似をして)、広まってます。オリジナルのピルスナーに比べるとスッキリと飲みやくした、スタイルとしての「ピルスナー」は世界のビールの主流となっているようです。 ■Heineken Pilsener, Dommelsch Pilsener, Grolsch Pilsener, etc Luxe pils, Urtyp【ルクセピルス、ウルタイプ】
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Malt【モルト】alcoholvrij【アルコールフリー】
オランダのアルコールフリービールには「MALT」という名前がついていることが多いです。麦水!ってイメージでしょうか。カフェのメニューにも必ずあるのでけっこう需要があるのかもしれません。アルコール度数はだいたい「0.1%以下」という表示。アルコールフリービールの製法には2種類あるそうです。 1.ビールを通常通りに醸造して、ビールの味を維持しながらアルコールを取り除く。 2.アルコールを発生させないように、ビールをつくる(つまり酵母を投入しない麦汁ってこと?)。 ■Amstel Malt, Grolsch Special Malt, Bavaria Malt Bier, Bavaria Riff's Ice Malt, etc Light【ライト】
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Oud bruin【オウドブラウン】
オランダでOud Bruinと言えば、アルコール度数の低い(2.5%〜3.5%)下面発酵の甘くて褐色のビール。子供やお年寄り用のテーブルビール(食事の時に飲むビール)だとか。日本人的には「少し苦みのある薄い冷やしあめ」を想像するとかなり近い味。 ベルギーでこのタイプのビールは「Tafelbier」(テーブルビール)として売っているようです。そのまんまやん。 ■Heineken Oud Bruin, Grolsch Oud Bruin, Gulpener Oud Bruin, Hertog Jan Oud Bruin, etc これがベルギーの東フランドル地方(オランダ語圏)での「Oud
Bruin」となると、古くからつくられていた茶色く酸味のあるビールを指すことになります。上面発酵によるビールをオーク樽で熟成させることにより、酸味が生まれるそうです。アルコール度数は4%〜8.4%。年代の違うものをブレンドしたり、チェリーなどの果実を漬け込んだものもあります。
ちなみに、西フランドル地方(オランダ語圏)で、同じような製法の古くからつくられていた赤銅色で酸味のあるビールのことは「Vlaams
Rood」(フランドルの赤)と呼ばれています。
Oud Bier【オウドビール】
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Witbier【ウィットビール】Tarwebier【タルウェビール】
Wit はオランダ語で「白」Tarwe は「小麦」。 上面発酵でつくられる、大麦以外に小麦を40%前後使用したビール。小麦は発芽させたもの(小麦モルト)を使うものと、発芽させない小麦を使うものがあるようです。小麦の割合が多かったり濾過していないものは、白く濁るので「ホワイトビール」と呼ばれるようです。オランダやベルビーのWitbierは、コリアンダーなどのハーブでで風味づけしたものが多いです。 ■Gulpener Korenwolf, Leeuw Valkenburgs Wit Bier, Wieckse Witte, 'tij wit, Ouwe Daen, etc |
Enkel【エンケル】Blond【ブロンド】
Dubbel【デュベル、ダブル】 Tripel 【トリペル、トリプル】 Quadrupel【クアドラペル】 もともとはビールの原材料の量を指していたそうです。通常製品をエンケル(シングル)、その2倍の原材料を使用しているものがダブル、3倍がトリペル、4倍がクアドラペル。クアドラペルは La Trappe Quadrupel が発表されてからの、ここ10年ほどに言われるようになったようで、2002年にオランダで出たビールタイプブックによると、Rochfort10 やWestvleteren Abt もクアドラペルタイプになっています。厳密に言うと、以下の表になるそうです。
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Trappistenbier【トラピストビール】
ベネディクト系修道院でつくられているビール。修道院では自給自足生活のため、古くから、生水を飲むより煮沸された飲料/断食時に飲む栄養価の高い飲料、として修道院内の消費用にビール醸造を行っていたようです。戦争などにより醸造を中止した修道院もありました。 修道院とまったく関係ない修道院風のビール(修道院をイメージした?)と区別するため、1997年から「修道士が醸造に関わっているもの/修道院内で醸造しているもの」だけを「トラピストビール」とし、「トラピストビール」には六角形のマークをプリントするようになりました。コンピュータ制御された近代的な醸造施設を使うところや、醸造専門職として外部からスタッフを雇ったり、ボトル詰めなどを行う別会社を設立した修道院もあり、修道院の収益事業としても成り立っているようです。 ■Achel(BG), Chimay(BG), Orval(BG), Rochfort(BG), Westmalle(BG), Westvleteren(BG) オランダのKoningshoeven 修道院がつくる
La Trappe は、90年代に入って修道士の高齢化と減少が避けられず(Koningshoevenに限られたことではありませんが)、自力でビールの醸造を続けることが困難になったようです。
Abdijbier【アベイビール】
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Bok, Bock【ボック】
もともとはドイツのアインベッカーでつくられた Einbecker Ur-bock がボックビールのオリジナルだそうです。 ドイツ語では「強いビール」を指す(?)らしいのですが、オランダ語でBok と言えば「ヤギ」になるので、ボックタイプのビールのラベルにはヤギが書かれていることが多いです。 下面発酵でアルコール度数は6.5%〜8%。1983年ごろからは上面発酵によるボックタイプのビールもでてきているようです。春と秋の季節ビールとして出まわります。オランダの秋ボックはなぜかゴムっぽい香りと味がする。不思議。 【春のボックビール】Lentebok (Spring
Bock), Meibok (May Bock)
【秋のボックビール】Herfstbok(Autumn
Bock), Dubbelbok(Double Bock), Tarwebok(Wheat Bock)
春と秋のボックだけではなく、他の季節にもその季節にちなんだビールが出ます。スタイルはボックタイプに近いものが多いようです。夏にはスッキリしたタイプ、冬にはよりアルコール度数の高いもの、クリスマスにちなんだものなどがあります。
【夏のビール】
【冬のビール】
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Dort, Dortmunder【ドルト、ドルトムンダー】
ドイツのドルトムントでつくられる、下面発酵でピルスナーより少し色の濃い黄金色/アルコール度数も少し高め、のビールがドルトムンダーと呼ばれるようになったそうです。ドルトムント以外の都市では「アルコール度数がちょっと高い」というイメージでつくっているようで、本家ドルトムントでつくられるビールが5%〜5.6%に対し、デンマークやオランダのドルトムンダースタイルは6.5%〜7.7%のものが多いようです。 ■Alfa Super Dortmunder, Amstel Gold, Gulpener Dort, Ridder Maltezer Bier, etc |
Alt【アルト】
Alt はドイツ語で「古い」という意味で、古い昔ながらのビールを指すこともあるらしいが、ビール界(どこよ?)で「アルトビール」といえば、ドイツのデュッセルドルフでつくられる、ホップの苦みのきいた赤銅色の上面発酵ビールを指すことのほうが多いです。アルコール度数は4.5%〜5%。そのアルトビールスタイルをイメージしてオランダでもつくっています。デュッセルで樽からのアルトビールを飲んだ人は「こんなんアルトビールじゃないよ〜(泣)」と思うかもしれません…。 ■Budels Batavier, Grolsch Amber, Lindeboom Venloosch Alt, etc Kolsch, Koelsch【ケルシュ】
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Belgisch Pale Ale【ベルギッシュペールエール】
イギリスでつくられている上面発酵のアンバー色のビールに比べると、少し甘みがありホップの香りが強めの印象があります。 ■De Ridder Vos, De Koninck(BG), Palm(BG), etc Stout【スタウト】
Schwarz【シュヴァルツ】
Rauchbier【ラウヒ(ラオホ)ビール】
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Ice Bier【アイスビール】
1992年ごろからの新しい製法(というか処理?)。熟成を終えた下面醗酵ビールを凍らせると、ビール内の水分が氷の結晶となる。この氷結晶(ビール内の水分、雑味)をフィルターで除去すると、より高い比重と高いアルコールをビールに残すことができる。のだそうです。 ■Dommelsch Ice, etc |
speciaalbier【スペシャールビール】
一般的にビールづくりに使用されないと言われている材料を使ったビールなどをスペシャルビールと呼ぶようです。 ◎「大麦麦芽」「ビール酵母」以外またはそれに加え、発酵時に他の発酵原料を多く使ったもの。 大麦をまったく使わず小麦だけでつくったもの、ナッツ類を足したもの、発酵用の糖分としてハチミツや果物を使ったもの、ビール用酵母ではなくワインやシャンパン用酵母を使ったもの、などがあるようです。 ◎「ホップ」以外またはれに加え、他の材料を風味づけなどに使ったもの。 風味づけと防腐剤として主にホップが使われますが、そのホップをまったく使わず様々なスパイスやハーブ類を使っているもの、テキーラやラム酒、ウォッカなどの酒類を使ったもの、などがあるようです。 ■tarwe(小麦麦芽): De Schans 100%
Tarwe
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Lambik, Lambiek【ランビック】
ベルギーで昔からつくられている、野生酵母を利用し、自然発酵でつくるビール。 年代の違うランビックをブレンドし、再発酵させたものは「Gueuze 」(グーズ)。ランビックやグーズにチェリーを漬け込み再発酵させたものは「Kriek, Kriek-Lambik」(クリーク)と呼びます。ラズベリーや桃など、他の果実や果汁も使われるようです。野生酵母を取り入れるには、ベルギーの一部地方の風土が大切なようで、オランダでつくっているところは聞いたことありません。 が、オランダ南部の De Zwarte Ruiter(Gulpener)でつくられている Mestreechs Aajt は、野生酵母を使用し木樽で熟成させています。昔この地方でつくられていたビールだそうです。野生酵母は培養したものかもしれませんが、ランビックの製法と似ています。どちらかというと、東フランドル地方の「Vlaams Bruin」に近いかもしれません。Mestreechs Aajt は、木樽で熟成させたものをアンバービール(?)とブレンドして、甘酸っぱい低アルコールビールとして出荷されます。 |
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