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ビールのスタイルは、製法や発酵の方法の違い、使用する材料、季節、昔からその土地でつくられているスタイルの名称、などで変わってきます。できあがったビールに対して、飲む側がわかりやすく(?)細かくタイプ分けすることもあります。

■オランダで見られるビールのスタイル
ベルギーのフランドル地方はオランダ語圏(フラマン後)で、ベルギービールと共通するスタイルがオランダでもあります。オランダで見られるビールのスタイルは、主にベルギービールとドイツビールの影響を受けたものが多いような気がします。
20年ほど前からマイクロブルワリーができはじめ、アメリカや日本のマイクロブルワリーのように世界のビールスタイルを取り入れてつくっているところも多いようです。

Pilsener, Pils【ピルスナー、ピルス】
もともとは、チェコのピルゼン地方でつくられた下面発酵の黄金色のビールを指す。淡色モルトを使用し、アルコール度数は5%前後。世界中の醸造所が製法を取り入れ(真似をして)、広まってます。オリジナルのピルスナーに比べるとスッキリと飲みやくした、スタイルとしての「ピルスナー」は世界のビールの主流となっているようです。
■Heineken Pilsener, Dommelsch Pilsener, Grolsch Pilsener, etc

Luxe pils, Urtyp【ルクセピルス、ウルタイプ】
luxe (英: luxury)はオランダ語で「ぜいたく」というような意味なので「ぜいたくピルスナー」?。
Ur はドイツ語でオリジナル。ただのピルスナーじゃなくてオリジナルのチェコピルスナーのようなタイプ、というような意味かな。オランダでは「一般的なピルスナータイプ」より、しっかりとした麦の甘みがあり、味わいが濃いような気がします。
■Luxe pils: Amstel 1897, Budels Pils, etc
■Urtyp: Brand UP, St. Christoffel Blond, 'tIJ Plzen, Oudaen Linteloo Gold, etc


Malt【モルト】alcoholvrij【アルコールフリー】
オランダのアルコールフリービールには「MALT」という名前がついていることが多いです。麦水!ってイメージでしょうか。カフェのメニューにも必ずあるのでけっこう需要があるのかもしれません。アルコール度数はだいたい「0.1%以下」という表示。アルコールフリービールの製法には2種類あるそうです。
1.ビールを通常通りに醸造して、ビールの味を維持しながらアルコールを取り除く。
2.アルコールを発生させないように、ビールをつくる(つまり酵母を投入しない麦汁ってこと?)。
■Amstel Malt, Grolsch Special Malt, Bavaria Malt Bier, Bavaria Riff's Ice Malt, etc

Light【ライト】
おそらく、アルコールフリービールの製法でアルコールを何度か取り除いたものだと思う。Alcoholarm (貧相なアルコール?)という低アルコールを表す言葉もあるようです。レモン味をつけたもの(ドイツのAlster/Radler風?)もあります。アルコール度数は2%〜4%ぐらいのようです。
■Amstel Light, Grolsch 2.5, Grolsch 2.5 Lemon, Lingen's Blond, etc


Oud bruin【オウドブラウン】
オランダでOud Bruinと言えば、アルコール度数の低い(2.5%〜3.5%)下面発酵の甘くて褐色のビール。子供やお年寄り用のテーブルビール(食事の時に飲むビール)だとか。日本人的には「少し苦みのある薄い冷やしあめ」を想像するとかなり近い味。
ベルギーでこのタイプのビールは「Tafelbier」(テーブルビール)として売っているようです。そのまんまやん。
■Heineken Oud Bruin, Grolsch Oud Bruin, Gulpener Oud Bruin, Hertog Jan Oud Bruin, etc

これがベルギーの東フランドル地方(オランダ語圏)での「Oud Bruin」となると、古くからつくられていた茶色く酸味のあるビールを指すことになります。上面発酵によるビールをオーク樽で熟成させることにより、酸味が生まれるそうです。アルコール度数は4%〜8.4%。年代の違うものをブレンドしたり、チェリーなどの果実を漬け込んだものもあります。
東フランドル地方で「Oud Bruin」と呼ばれるこのスタイルは、オランダでは「Vlaams Bruin」(フランドルのブラウン)と呼ばれます。ややこしい。
■Liefmans Odnar(BG), Liefmans Goudenband(BG), Van Honsebrouck Bacchus(BG), etc

ちなみに、西フランドル地方(オランダ語圏)で、同じような製法の古くからつくられていた赤銅色で酸味のあるビールのことは「Vlaams Rood」(フランドルの赤)と呼ばれています。
■Rodenbach(BG), Bavik Petrus Oud Brui(BG), Verhaeghe Duchesse de Bourgogne(BG), etc

Oud Bier【オウドビール】
直訳で考えると「古いビール」(笑)。ではなくて、寝かせたビール「ビンテージビール」のこと。Jaargang(年代を経るという意味かな?)という、ワインのビンテージを表すオランダ語でも通じると思います。酵母が瓶(または樽)に入っているもの、アルコール度数が高くまだ分解できる糖分が十分にあるもの、フルーツを漬け込んだもの、などのビールは、ワインと同じように寝かせておくと、年代を経るごとに味わいがまろやかになりコクも深まることがあります。


Witbier【ウィットビール】Tarwebier【タルウェビール】
Wit はオランダ語で「白」Tarwe は「小麦」。
上面発酵でつくられる、大麦以外に小麦を40%前後使用したビール。小麦は発芽させたもの(小麦モルト)を使うものと、発芽させない小麦を使うものがあるようです。小麦の割合が多かったり濾過していないものは、白く濁るので「ホワイトビール」と呼ばれるようです。オランダやベルビーのWitbierは、コリアンダーなどのハーブでで風味づけしたものが多いです。
■Gulpener Korenwolf, Leeuw Valkenburgs Wit Bier, Wieckse Witte, 'tij wit, Ouwe Daen, etc

Enkel【エンケル】Blond【ブロンド】
Dubbel【デュベル、ダブル】
Tripel 【トリペル、トリプル】
Quadrupel【クアドラペル】

もともとはビールの原材料の量を指していたそうです。通常製品をエンケル(シングル)、その2倍の原材料を使用しているものがダブル、3倍がトリペル、4倍がクアドラペル。クアドラペルは La Trappe Quadrupel が発表されてからの、ここ10年ほどに言われるようになったようで、2002年にオランダで出たビールタイプブックによると、Rochfort10 やWestvleteren Abt もクアドラペルタイプになっています。厳密に言うと、以下の表になるそうです。
エンケル 初期比重:1.053-68g/cm3 最終的なアルコール度数は 6%〜7.4% になる
ダブル 初期比重:1.062-70g/cm3 最終的なアルコール度数は 6%〜7.5% になる
トリペル 初期比重:1.065-80g/cm3 最終的なアルコール度数は7.5%〜9.5% になる
クアドラペル 初期比重:1.070-94g/cm3 最終的なアルコール度数は8.5%〜12% になる
エンケル(シングル)タイプのものは、いつ頃からか、そのビール色から「ブロンド」と呼ばれるようになっているようです。


Trappistenbier【トラピストビール】
ベネディクト系修道院でつくられているビール。修道院では自給自足生活のため、古くから、生水を飲むより煮沸された飲料/断食時に飲む栄養価の高い飲料、として修道院内の消費用にビール醸造を行っていたようです。戦争などにより醸造を中止した修道院もありました。
修道院とまったく関係ない修道院風のビール(修道院をイメージした?)と区別するため、1997年から「修道士が醸造に関わっているもの/修道院内で醸造しているもの」だけを「トラピストビール」とし、「トラピストビール」には六角形のマークをプリントするようになりました。コンピュータ制御された近代的な醸造施設を使うところや、醸造専門職として外部からスタッフを雇ったり、ボトル詰めなどを行う別会社を設立した修道院もあり、修道院の収益事業としても成り立っているようです。
■Achel(BG), Chimay(BG), Orval(BG), Rochfort(BG), Westmalle(BG), Westvleteren(BG)

オランダのKoningshoeven 修道院がつくる La Trappe は、90年代に入って修道士の高齢化と減少が避けられず(Koningshoevenに限られたことではありませんが)、自力でビールの醸造を続けることが困難になったようです。
伝統あるオランダの修道院ビールを存続させるため、1999年からはオランダ大手の醸造所 Bavaria を新しいパートナーとし、醸造のための近代的な機材やスタッフを外部から迎えいれました。現在、La Trappe のラベルに六角形のマークはプリントされていません。しかし、修道院内の醸造所で、以前からのレシピでつくられていることに変わりはありません。

Abdijbier【アベイビール】
閉鎖された、あるいは醸造は中止した現存する修道院と、ライセンス契約などを行い、既存の醸造所でつくられる修道院の名前をつけたビール。最近(2001年頃?)、修道院とまったく関係ない修道院風のビール(修道院をイメージした?)と区別するため「ベルギーのアベイビール」というマークがつくられ、プリントされるようになったようです。
■Affligem(BG), Corsendonk(BG), Leffe(BG), St. Feuillien(BG), Val-Dieu(BG), etc


Bok, Bock【ボック】
もともとはドイツのアインベッカーでつくられた Einbecker Ur-bock がボックビールのオリジナルだそうです。
ドイツ語では「強いビール」を指す(?)らしいのですが、オランダ語でBok と言えば「ヤギ」になるので、ボックタイプのビールのラベルにはヤギが書かれていることが多いです。
下面発酵でアルコール度数は6.5%〜8%。1983年ごろからは上面発酵によるボックタイプのビールもでてきているようです。春と秋の季節ビールとして出まわります。オランダの秋ボックはなぜかゴムっぽい香りと味がする。不思議。

【春のボックビール】Lentebok (Spring Bock), Meibok (May Bock)
ドイツのマイボックがベースになっていると思われる、明るい色でアルコール度数は6.5%〜7.5%の甘みが強いビール。伝統的にマイボックは、夏の気温上昇に耐えることができるように、高アルコールで醸造されていた(アルコールは、防腐剤として使用されていた)。現在、オランダでは上面発酵のもの下面発酵のものがある。Lentebok は3月ごろから出はじめ、Meibock はその名の通り5月に出るようですが、あまり違いがよくわかりません。
■Lentebok: Alfa Lente Bok, Lammetje, De Schans Lentebier, etc
■Meibok:  Brand Imperator, Hertog Jan Meibock, Lindeboom Lentebock, Drie Horne Miebock, etc

【秋のボックビール】Herfstbok(Autumn Bock), Dubbelbok(Double Bock), Tarwebok(Wheat Bock)
ドイツのウルボック、デュッペルボックがベースになっていると思われる、濃い色でアルコール度数は6.5%〜8%の甘みが強いビール。上面発酵のもの下面発酵のものがある。Herfstbok が、伝統的なドイツのボックスタイルを継承していて、Dubbelbokは、よりアルコール度数も甘みも強いバージョン。Tarwebok は、大麦だけでなく、小麦も使用したボックビール。
■Herfstbok: Dommelsch Bokbier Primeur, Grolsch Herfst Bok, Utrechts Bok, etc
■Dubbelbok: Brand Bier Dubbelbock, etc
■Tarwebok: Bavaria Tarwebok Bier, Heineken Tarwebok, Nelis Tarwe Bok, etc

春と秋のボックだけではなく、他の季節にもその季節にちなんだビールが出ます。スタイルはボックタイプに近いものが多いようです。夏にはスッキリしたタイプ、冬にはよりアルコール度数の高いもの、クリスマスにちなんだものなどがあります。
【春のビール】
■イースター: Drie Horne Paasbier, 't Ij PaasIj,etc

【夏のビール】
■Zomerbier: Grolsch Zomer Goud, De Hemel Marikenbier, Maximiliaan Speltbier, Pelgrims zomerbier Bravoer, etc

【冬のビール】
■Winterbier: Budesls Winterbier, Grolsch Winter Vorst, Hertog Jan Winterbier, Maximiliaan Winter Warmer, etc
■クリスマス: Grolsch Witte Kerst, Sinterklaas Bier, Kerst Bier, Bon Vivant Christmas, etc
■年末年始: Brand Bier Sylvester, 't Ij Ijndejaas, etc


Dort, Dortmunder【ドルト、ドルトムンダー】
ドイツのドルトムントでつくられる、下面発酵でピルスナーより少し色の濃い黄金色/アルコール度数も少し高め、のビールがドルトムンダーと呼ばれるようになったそうです。ドルトムント以外の都市では「アルコール度数がちょっと高い」というイメージでつくっているようで、本家ドルトムントでつくられるビールが5%〜5.6%に対し、デンマークやオランダのドルトムンダースタイルは6.5%〜7.7%のものが多いようです。
■Alfa Super Dortmunder, Amstel Gold, Gulpener Dort, Ridder Maltezer Bier, etc

Alt【アルト】
Alt はドイツ語で「古い」という意味で、古い昔ながらのビールを指すこともあるらしいが、ビール界(どこよ?)で「アルトビール」といえば、ドイツのデュッセルドルフでつくられる、ホップの苦みのきいた赤銅色の上面発酵ビールを指すことのほうが多いです。アルコール度数は4.5%〜5%。そのアルトビールスタイルをイメージしてオランダでもつくっています。デュッセルで樽からのアルトビールを飲んだ人は「こんなんアルトビールじゃないよ〜(泣)」と思うかもしれません…。
■Budels Batavier, Grolsch Amber, Lindeboom Venloosch Alt, etc

Kolsch, Koelsch【ケルシュ】
ドイツのケルンでつくられる、上面発酵の淡色ビール。ケルンの大聖堂の鐘の音が聞こえる範囲でつくったものだけを「ケルシュ」と呼ぶ、ということもそうです。ピルスナーにはない上面発酵独特のフルーティな香り、アルコール度数は4%〜5%。
世界中の醸造所で、この「ケルシュ」タイプをつくるところがあり、オランダでもつくられています。
■Budels Parel, Maximiliaan Bethanien Bier, Texels Goud, etc


Belgisch Pale Ale【ベルギッシュペールエール】
イギリスでつくられている上面発酵のアンバー色のビールに比べると、少し甘みがありホップの香りが強めの印象があります。
■De Ridder Vos, De Koninck(BG), Palm(BG), etc

Stout【スタウト】
イギリス、アイルランドでつくられる、上面発酵で濃く焙煎したモルトを使用する黒いビール。アルコール度数は3%〜6%ぐらいで、色のわりには、フラットであっさりとした印象がある。
■De Bierkoning Chocolade Stout, etc

Schwarz【シュヴァルツ】
ドイツでつくられる、下面発酵で濃く焙煎したモルトを使用する黒いビール。アルコール度数は4.5〜5%。
■De Schans Schwarz, etc

Rauchbier【ラウヒ(ラオホ)ビール】
もともとはドイツのバンベルクでつくられる、燻製した麦芽でつくる下面発酵ビール。その後、上面発酵でも燻製した麦芽を使用したビールのことを指すようになっているようです。
■De Hemel Moenen, etc


Ice Bier【アイスビール】
1992年ごろからの新しい製法(というか処理?)。熟成を終えた下面醗酵ビールを凍らせると、ビール内の水分が氷の結晶となる。この氷結晶(ビール内の水分、雑味)をフィルターで除去すると、より高い比重と高いアルコールをビールに残すことができる。のだそうです。
■Dommelsch Ice, etc

speciaalbier【スペシャールビール】
一般的にビールづくりに使用されないと言われている材料を使ったビールなどをスペシャルビールと呼ぶようです。
◎「大麦麦芽」「ビール酵母」以外またはそれに加え、発酵時に他の発酵原料を多く使ったもの。
大麦をまったく使わず小麦だけでつくったもの、ナッツ類を足したもの、発酵用の糖分としてハチミツや果物を使ったもの、ビール用酵母ではなくワインやシャンパン用酵母を使ったもの、などがあるようです。
◎「ホップ」以外またはれに加え、他の材料を風味づけなどに使ったもの。
風味づけと防腐剤として主にホップが使われますが、そのホップをまったく使わず様々なスパイスやハーブ類を使っているもの、テキーラやラム酒、ウォッカなどの酒類を使ったもの、などがあるようです。

■tarwe(小麦麦芽): De Schans 100% Tarwe
■noten(ナッツ): Bios Mongozo (palmnoot: ココナツ), Pietra (kastanje: 栗)
■kruiden en specerijen(ハーブ&スパイス): SNAB Speculator, Jopen Koyt, Gulpener Gallius, Mestreechs Blont, etc
■tabak(タバコの葉): St. Christoffel Taboe, etc
■honing(ハチミツ): Haerlemsch Honing, SNAB Koning Honing, etc
■Vruchten(果物): Drie Horne Kandeleir (krenten, rozijnen, abrikozen), De Schelde Seeschuymer Cranberry-bier, etc


Lambik, Lambiek【ランビック】
ベルギーで昔からつくられている、野生酵母を利用し、自然発酵でつくるビール。
年代の違うランビックをブレンドし、再発酵させたものは「Gueuze 」(グーズ)。ランビックやグーズにチェリーを漬け込み再発酵させたものは「Kriek, Kriek-Lambik」(クリーク)と呼びます。ラズベリーや桃など、他の果実や果汁も使われるようです。野生酵母を取り入れるには、ベルギーの一部地方の風土が大切なようで、オランダでつくっているところは聞いたことありません。
が、オランダ南部の De Zwarte Ruiter(Gulpener)でつくられている Mestreechs Aajt は、野生酵母を使用し木樽で熟成させています。昔この地方でつくられていたビールだそうです。野生酵母は培養したものかもしれませんが、ランビックの製法と似ています。どちらかというと、東フランドル地方の「Vlaams Bruin」に近いかもしれません。Mestreechs Aajt は、木樽で熟成させたものをアンバービール(?)とブレンドして、甘酸っぱい低アルコールビールとして出荷されます。

1.ビールの製法
2.ビールのスタイル、タイプ
3.オランダビールに関する用語